[book] 2014年8月の読書

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今月はほとんど「私本太平記」でした。
(今日は休みだったので最後一気に読み終わった...)
青空文庫で読んだので、市販されている本に比べて1冊あたりのページ数が短いです。
が、実家に帰っていたり休みが多かったりでペースを守れなかったのも事実です。
一覧は以下。読んだ順になります。番号は前月からの通し番号です。

50. 吉川英治 「私本太平記(六) 八荒帖」
51. 吉川英治 「私本太平記(七) 千早帖」
52. 吉川英治 「私本太平記(八) 新田帖」
53. 吉川英治 「私本太平記(九) 建武らくがき帖」
54. 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
55. 吉川英治 「私本太平記(十) 風花帖」
56. 吉川英治 「私本太平記(十一) 筑紫帖」
57. 吉川英治 「私本太平記(十二) 湊川帖」
58. 吉川英治 「私本太平記(十三) 黒白帖」

「注文の多い料理店」は正直数ページなので入れるかどうか迷いましたが入れました。
上記は全て青空文庫の本です。なので先月に引き続き今月も本への出費0。
まぁ家の本も同様に減っていないわけですが...。

「私本太平記」の時代は「新・平家物語」の時代よりも混沌としており、それぞれの欲がぶつかり合う時代であるためか一見まとまりのないように見えました。
しかし、尊氏や正成を取り巻く市井の人々を描くのが抜群な吉川氏により上手く紡ぎあげられていると思います。
特に覚一法師と右馬介、観世清次(観阿弥)につながる流れが非常に素晴らしい。
また、この本の主役たるべき尊氏や正成も現代の世相を反映したかのような言葉を投げかけています。
ここでは2人の言葉を取り上げましょう。

●楠木正成(「(十) 風花帖」より)
(初陣を願い出る正行に「正義の戦場を選べ」と言う正成へ、正行からの「今の戦は正義ではないのか」との問いかけに対して)

「(略)人はたれも正しからんとし、正しいと号しているのだ。みずから邪悪の軍と思っている者はいない。……だがそれがまま邪軍となり魔行をほしいままにし出してくる。大本は忘れやすく、人は大昔の獣に返りやすい。いくさとはそんなものなのだ」

●足利尊氏(「(十一) 筑紫帖」より)
(九州に逃れ多々良ヶ浜で宮方を破った後、義兄英時を祀る尊氏に北条氏滅亡時宮方に付き今は尊氏に付く大友具簡が「恨みの一端が晴れたことでしょう」と言ったことに対して)

「やれ、義兄のあだ、子のかたき、親の怨みのと申し合っていたら、弓矢の本道などは見失われてしまうだろう。それのみか、復讐は果てなきまたの復讐を生んでゆく。永劫、 修羅の殺し合いを演じてゆくほか世に何を残す? ……。ばかな。われら弓矢の家の使命とはそんなものでない。……ときによりあえない犠牲を身内に見るもぜ ひなく、英時どのなど、真にお気のどくなお人ではあった。とはいえ、しょせん幕府と共に末路をいさぎよくなさるほかないお立場でもあり、それがそのお人の 弓矢の大道であるならさぞ御本望であったろう。――尊氏はそう思う。そう思うて今日の御邂逅に、地下へ一言、ごあいさつを申したまでだ。恨みの何のと、そ んな小義にとらわれて、愚痴なお手向けしたわけではない」

この本は「新・水滸伝」と並び吉川英治の最晩年の本です。円熟味を増した世界を味わってみてはいかがでしょう。