妖怪と禅師

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ここ2週間で読んだのが司馬遼太郎の「妖怪」と「大盗禅師」。
「妖怪」は応仁の乱前のお話。「大盗禅師」は江戸時代の慶安の変(由井正雪の乱)のお話。
時代は違うが、どちらも共通しているのが幻想小説
妖怪では源四郎が唐天子の幻術に終始翻弄されまくるし、大盗禅師でも浦安仙八が禅師や蘇一官に翻弄される。
この翻弄され具合がイラッとするのだが、当時の人からするとそういうこともあるのかもしれない。
(本当に方術や幻術があるのかどうかは別として)

この2作、司馬遼太郎の小説の中では割と評価が低い。
同時代には「坂の上の雲」が刊行されており、その前後の「竜馬がゆく」や「燃えよ剣」の影響で歴史に忠実でないものが邪道と見られるのかもしれない。
(というか、小説だし上記の代表作も厳密には歴史に忠実ではないと思っているが)
が、彼の出発は伝奇小説、幻想小説なのである。例えば「梟の城」、「上方武士道」、「風の武士」など。
妖怪や大盗禅師などは歴史に縛られない分生き生きと描いているように見えた。

彼の代表作が好きな人は、この歴史の裏側の不思議な世界に違和感を感じるかもしれない。
が、とりあえず「司馬史観」は置いといて、ニュートラルな気持ちで読んでみると結構楽しく読めると思う。
どちらも長編でかつ何度も何度も翻弄される辺りかなりイラッとしますけどね。